野生の猿が温泉に浸かる場所|長野・地獄谷野猿公苑

雪景色の中で温泉に浸かる野生のニホンザル(長野県・地獄谷野猿公苑)
雪景色の中で温泉に浸かる野生のニホンザル(長野県・地獄谷野猿公苑)

猿という存在

猿。
アジア圏では、最も親しまれてきた動物のひとつではなかろうか。

人間に最も近い動物といわれ、経験から学習し、他個体の行動を観察し、模倣する社会性の動物。
古来より、神話や昔話、宗教的象徴としても扱われてきた存在だ。

そんな彼らが、雪に囲まれ、肩まで湯に沈め、
何も語らず、ただ目を細めている。

「野生のサルが、温泉に浸かる。」

ありそうで、なかなか目にすることのない不思議な光景が、
世界でも、ここ長野県だけに存在すると言われている。

地獄谷という場所

舞台となるのが、長野県北部、志賀高原の山あいに位置する地獄谷野猿公苑である。

谷の名が示す通り、切り立った崖に囲まれ、
地の底から噴き出す湯気と硫黄の匂いが立ちこめる場所だ。

人の暮らしからは少し距離があり、冬になれば、深い雪が音を奪っていく。


ここは、動物園ではない。

檻も、芸も、調教もない。
ただ、もともとこの山に生きていた野生の猿たちが、
人間の都合ではなく、自分たちの判断で集まってくる場所である。

寒さをしのぐためか、
あるいは、ただ心地よいからか。
理由を語る者はいない。

猿たちは今日も、湯に浸かり、黙って冬をやり過ごしている。


人は、その様子を、少し離れた場所から、静かに眺めることしかできない。

ここに行くきっかけは、仕事の出張があったためだ。
仕事終わり、ついでで立ち寄るにしては、なかなかアクセスが難しいところにあり、機材も必要最低限で臨んだ。

訪れた理由と、道のり

ここに足を運ぶことになったきっかけは、仕事での出張だった。
仕事終わり、ついでに立ち寄るにしては、
正直なところ、アクセスは決して良いとは言えない。

撮影機材も、必要最低限。
大掛かりな準備をする余裕はなく、
今回は「見られたらいい」くらいの心持ちで向かった。

公苑までは、入口からおよそ2km。
雪に覆われた山道を歩く。
荷物は軽くしたつもりでも、足元は不安定で、
思った以上に体力を削られる。

観光地でありながら、
この道のりが、どこか「選ばれた人だけが辿り着く場所」のようにも感じられた。

湯に集まる猿たち

苑内に入ると、
すでに50匹ほどの猿たちが、思い思いに湯に浸かっていた。

野生ゆえ、人間への警戒心は高い。
距離を詰めすぎれば、すぐに視線を返される。
こちらが一歩引くことで、ようやく同じ空間にいさせてもらえる。

面白いのは、
彼らが決して騒がないことだ。
湯の中では、争いもなく、
ただ静かに、時間が流れている。

その姿は、
「可愛い」というよりも、
どこか人間的で、少し考え込んでいるようにも見えた。

見る側としての距離

カメラを構えながら、
ふと考える。

自分は、見ていい側なのだろうか。
シャッターを切るたびに、
その問いが頭をよぎる。

だが、彼らは何も気にしない。
こちらの葛藤など関係なく、
湯に浸かり、冬をやり過ごす。

その姿を前に、
こちらができることは、
ただ静かに観察することだけだった。

そして、次の出会いへ

こうして、地獄谷での時間は終わった。
猿たちは変わらず湯に浸かり、
こちらだけが、元の世界へ戻っていく。

日本には、
まだまだ「野生と出会える場所」が残っている。

次に向かったのは、北の大地。

次回、北海道で出会ったキタキツネをレポート!

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